◆オイルニスのあれこれやってみた

2016年06月15日(水)

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先日少し書きました、レーキ顔料の洗浄・濾過・乾燥が終わりましたので、パウダー状に仕上げてみました(この細かい粉の状態にまでしてみないと、どういう発色の特性があるのか自分はよく判らないです)。

 

アルミの媒染で出した色の中では、今回の色が今までで一番ショッキングな色が出せました。んー、おもしろい。

 

錫の媒染では比較的派手な発色が可能だなと何となく感じていたのですが、この結果を見るとアルミだけでも十分バリエーションが組める気がしてきました。

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プリンスに捧げるべく紫(ゆかり)をせっせと繰り返し作っていましたので、最近は変な熟練感が出てきてしまいました。

 

今回のが中央(通称:わかめオパール)。一番右のだけ錫+アルミによる媒染で、他4つはアルミだけを用いています。

 

桐生の天然染色研究所の田島所長に見せたらどんな顔するだろう・・・以前いろいろ教えていただいた時、別れ際「今度またコチニール談義しよう!」というちょっとシュールなエールをいただいたきりになっていたからなぁ。

 

今度時間を作って、できた顔料をお見せしなくては(一緒におもしろがってくれるといいんだけど・・・)。

 

そして、一度脱線した暴走機関車は急には止まらない訳で・・・。

 

最近、このレーキ顔料作りと並行してやっていたのが、オイルニスに用いるロジンの熱処理の実験であります。

 

こちらの奥深さも果てしないものがあって、少々恐怖おののいています・・・こうなると、古い絵画に描かれている錬金術師が、なぜ憂鬱な表情をしているのかも何だか解る気がしてきますが・・・。

 

ちょっと関係のない話に思われるかもしれませんが、宝石の世界では一般的に知られていることで(ちなみに、僕はつい最近知ったのですが)、ルビーとサファイアは見た目の色はあれだけ異なるのに、いずれも98%以上同一の物質が結晶化したコランダムの一種なのだそうです(マジか!)。

 

本来、純粋なコランダムは無色透明で、わずかな不純物があの色の差を生むらしいのです(ワオ!世界って不思議だね)。

 

「原子の規則的な並び方のわずかな違いで、まったく別の色になることがある」

 

(仮説)オイルニスに用いるロジンも結晶構造を作りますから、含まれる不純物の違いで同じように吸収する光の波長が変わり、人の目には色が違って見えるのではないかということで、あとは実践あるのみ。果敢にやってみました。

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まずは微量のアルミ(上写真)。加熱時間、温度は、がんばって極力一定にしたつもりです。

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次が錫(上写真)。

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最後は鉄(上写真)です。ここでの固まりの形の違いは、ただ保存のため任意に砕いただけなのであまり意味はありませんが、ガラス容器に散らばった小さな破片などを観察すると明らかに色の違いが見て取れました。

 

色以外にも、加熱の過程での変化や、樹脂のツヤ等にも違いが確認できて興味深かったです。

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古典的でとてもシンプルなオイルニス(写真はイメージです。まだ試作品ですね。)において、いろいろ試していく道すがら、作者の数だけ多様性が否応無しでも発生するメカニズムを今更ながら実感する日々であります。

 

情報のグローバル化と作家のローカル性は、相反するものではなくて、パラレルであったり、より強調されるかたちで作品化されたものが(楽器に限らず)、やはりおもしろいと感じます。



◆チェロのペグ穴のブッシング

2016年06月10日(金)

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チェロのペグ交換をするのですが、もともとに入っていたペグがかなり太いものでしたので、一度穴を埋め直す作業が必要となりました。

 

そんな時、行うのがこのブッシング作業なのですが、 僕は師匠の工房で旋盤を使ってのブッシングを教えていただいて今でもこのやり方で行っています。

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チェロのペグ穴は左右合わせて8カ所ある訳ですが、慣れてくると上の写真くらいの柘植材があれば楽器一本分すべて穴埋めが可能です。

 

修理材の無駄も出にくいので、自分は好きな修理法です。

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柘植材の小口(とても堅いです)の加工はなかなか大変ですので、初めからノミだけで加工をしようとはしません。

 

できるかぎり限り大きな加工が可能な道具を選択して(この場合はノコギリですね)作業をすることが我々木工に関わる職人の習慣でもあり、普段、自分自身も大事な基礎として身につけていくことを心がけています。

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ちなみに、こちらは応用編ではありますが、僕はリューターも時々使います。

 

ただし、誤解があってはいけないのですが、合理的な機械の多くは、それ以前に手道具で奇麗に仕事ができる技術を身につけていないと、一瞬で取り返しのつかない失敗に結びつきますので、何でもかんでも取り入れれば良いということではありません。

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もちろん、これで仕上げることなどありませんのでご心配なく。このあたりからノミを入れてあげれば仕事もスムーズですし、奥まったペグボックスの底なども不用意に傷つける心配も減ります。



◆調整・修理いろいろ

2016年06月03日(金)

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古いスズキのコントラバスの指板の反りの全面削り直し作業。黒檀材ではない指板は削ると当然白くなってしまいますので・・・。

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黒く染めて仕上げることになります。黒は案外よく見ると紫色っぽくなってしまいがちなのですが、いい感じに染まったと思います。

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横板・表板・裏板がはがれてしまった楽器も、新しいニカワで適切な処置をしてあげれば、ほとんどの場合修理が可能です。

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こちらは裏板の割れ修理の為の石膏キャスティングの様子。もう少し肌理が整った石膏にできたら良かったのですが・・・何事も焦ってはいけませんね。