◆べっ甲フロッグ(Tongue 折れ)修理

2015年08月17日(月)

IMG_4997

べっ甲で作られたフロッグの修理。フェルール(半月形のリング)がはまっている箇所(Tongue / 舌)が元からちぎれる様に断裂してしまったのを接着し直して銀のプレートを埋め込み補強を入れました。

IMG_4982

銀のプレートも埋め込み接着だけでは、後のズレや伸びや開こうとする力にも弱いので、銀板から1mmの丸棒を作ってピン打ちをします。

IMG_5004

通常2ヶ所くらいピンを入れれば十分なのですが、このフロッグ、製作時のべっ甲の合わせ(べっ甲フロッグは複数枚の薄いべっ甲を水と熱で張り合わせた塊べっ甲で作られています)に不安定な箇所があり、縦方向にも開こうとするのも同時に避けたい修理ケースでしたので、(この段階の写真では)ちょっと大げさに見えますが4ヶ所ピン打ちをさせていただきました。

IMG_5040

最終的な加工と仕上げをするとそこまで大げさに見えませんので、ご安心いただけたらと思います。



◆コントラバス魂柱割れ修理

2015年08月11日(火)

IMG_4714

表板側に倒してしまったと思われるコントラバス。その衝撃で裏板(合板)を魂柱が突き抜けてしまっていました。さすがに、今回は裏板をオープンしての修理になります。

IMG_4724

楽器の隆起の左右対称性を利用して、魂柱で穴の開いた側とは反対のエリアをモデリングコンパウンド(石膏とはまた別の、型どりのための素材)で型をとり、破損した裏板の隆起を戻していきます。

IMG_4736

今回のコントラバスの裏板は合板材でして、しかも随分古い楽器でしたので板のラミネート構造が老朽化の果てに楽器輪郭周辺がめくれてきていました。

 

裏板一回り、ニカワで補修できましたので、楽器の裏板として多少必要となる硬度もかなり回復しました。

IMG_4727

ちなみに、オープン作業中に楽器の横板の変形を最小限に抑えるために、外した裏板の代わりに骨組み状の押さえ棒を楽器に取り付けておきます。

IMG_4728

今回裏板を外したことにより、バスーバーがはがれているのを発見してしまいました。こうした修理の機会に直させていただきます。

IMG_4734

ただ、今回の修理では表板まで外す訳にもいかないので、前々から作らなくてはと考えていた(長く保留にしていた)、横板がついている状態でも表板や裏板の修理ができるクランプを(勢いにまかせて)製作することにしました。

IMG_4737

一応、今後のためにもコントラバスのセンターまでリーチできるデザインにしてみました。

 

イームズさんが、同じデザインをたくさん並べた時に感じられる美しさというものがあると言っているらしいのですが・・・僕の場合、質感がIKEA になってしまいました。

IMG_4740

でも、完成と同時に実戦で活躍していただきましたので、実用性のデザインの方はまずまずということにしておきましょう。

IMG_4746

割れの修理の後、裏・表板ともに魂柱パッチを施しました。この接着にもモデリングコンパウンドの型(石膏型より簡易的な方法)を用いました。

IMG_4916

裏板の隆起の連続面も回復できたのでよかった。

IMG_4907

取り外していた裏板を楽器に接着し直しなおしましたので、ニスのリタッチを進めて修理を仕上げてまいります。