◆石膏を消和させてジェッソを作る

2015年09月02日(水)

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8月に参加した鳥取県三朝でのワークショップの時に、同業者の木村さんから教えていただいた、石膏を使ったジェッソを実践してみました。石膏を大量の水で反応させて固まる力を取り除きます。

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かき混ぜては沈殿させ、上澄みが汚れるようだったら水を捨て綺麗な水と入れ替える・・・そして、またかき混ぜる。

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約一ヶ月ほどその作業を繰り返し、ろ過したものがこれです。写真は、思っていたより沢山できてしまって、今使う分以外保存に回そうと乾かしているところです。

 

後から気がついたのですが、チェンニーニの技法書にも出てくる方法のようで絵画の世界では古典的な技法のようです。



◆べっ甲フロッグ(Tongue 折れ)修理

2015年08月17日(月)

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べっ甲で作られたフロッグの修理。フェルール(半月形のリング)がはまっている箇所(Tongue / 舌)が元からちぎれる様に断裂してしまったのを接着し直して銀のプレートを埋め込み補強を入れました。

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銀のプレートも埋め込み接着だけでは、後のズレや伸びや開こうとする力にも弱いので、銀板から1mmの丸棒を作ってピン打ちをします。

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通常2ヶ所くらいピンを入れれば十分なのですが、このフロッグ、製作時のべっ甲の合わせ(べっ甲フロッグは複数枚の薄いべっ甲を水と熱で張り合わせた塊べっ甲で作られています)に不安定な箇所があり、縦方向にも開こうとするのも同時に避けたい修理ケースでしたので、(この段階の写真では)ちょっと大げさに見えますが4ヶ所ピン打ちをさせていただきました。

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最終的な加工と仕上げをするとそこまで大げさに見えませんので、ご安心いただけたらと思います。



◆コントラバス魂柱割れ修理

2015年08月11日(火)

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表板側に倒してしまったと思われるコントラバス。その衝撃で裏板(合板)を魂柱が突き抜けてしまっていました。さすがに、今回は裏板をオープンしての修理になります。

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楽器の隆起の左右対称性を利用して、魂柱で穴の開いた側とは反対のエリアをモデリングコンパウンド(石膏とはまた別の、型どりのための素材)で型をとり、破損した裏板の隆起を戻していきます。

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今回のコントラバスの裏板は合板材でして、しかも随分古い楽器でしたので板のラミネート構造が老朽化の果てに楽器輪郭周辺がめくれてきていました。

 

裏板一回り、ニカワで補修できましたので、楽器の裏板として多少必要となる硬度もかなり回復しました。

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ちなみに、オープン作業中に楽器の横板の変形を最小限に抑えるために、外した裏板の代わりに骨組み状の押さえ棒を楽器に取り付けておきます。

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今回裏板を外したことにより、バスーバーがはがれているのを発見してしまいました。こうした修理の機会に直させていただきます。

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ただ、今回の修理では表板まで外す訳にもいかないので、前々から作らなくてはと考えていた(長く保留にしていた)、横板がついている状態でも表板や裏板の修理ができるクランプを(勢いにまかせて)製作することにしました。

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一応、今後のためにもコントラバスのセンターまでリーチできるデザインにしてみました。

 

イームズさんが、同じデザインをたくさん並べた時に感じられる美しさというものがあると言っているらしいのですが・・・僕の場合、質感がIKEA になってしまいました。

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でも、完成と同時に実戦で活躍していただきましたので、実用性のデザインの方はまずまずということにしておきましょう。

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割れの修理の後、裏・表板ともに魂柱パッチを施しました。この接着にもモデリングコンパウンドの型(石膏型より簡易的な方法)を用いました。

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裏板の隆起の連続面も回復できたのでよかった。

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取り外していた裏板を楽器に接着し直しなおしましたので、ニスのリタッチを進めて修理を仕上げてまいります。



◆お客様より中古コントラバスのご紹介

2015年07月07日(火)

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工房のお客様より、中古のコントラバスのご紹介をいただきました。

 

ご好意にもより、使っていただける方にはセットで、40万円(税込み)で良いとのことです。また、希望者にへと、おまけも付けていただきました。相場的なものを考えますと、どなたにも驚いていただける内容にできるかなと思い、楽器をお預かりいたしました。

 

楽器:Karl Hoefner /ケース有り ガンバスタイル(シリアルナンバー185145)

弓:W-Seifert /ケース有り (ニッケル・黒檀フロッグ)

おまけ①:K. Shimoera 弓(ニッケル・黒檀フロッグ)/ケース有り

おまけ②:椅子/座面高さ 約60cm~約78cm

おまけ③:折りたたみ可能椅子/座面高さ 約47cm~約83cm

 

更なる詳細につきましては、工房で実物をご覧いただきながらのほうが分かりやすいかと思いますので、ご興味のある方はお気軽にお問い合わせ下さい(工房:0277-22-1175)。

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◆コントラバスのエンドピン交換(位置+角度修正あり)

2015年06月29日(月)

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こちらは、エンドピンの交換で預かっているコントラバス。エンドピン穴の大きさも、位置も、角度も修正が必要な状態でしたので、一度完全に埋めなおすブッシングを施しました。

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エンドピン穴を開け直すと、こんなわずかしか残らないブッシング材にも個人的には「けなげ組(詳しくは、亀田の柿の種パッケージ裏をご参照下さい)」の称号を与えたい気分になります。

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エンドピンは、わずかに裏板側へ倒した角度で取り付け完了いたしました。

 

テールガットに日々引っ張られて(それに加えて演奏時の楽器を立てる力もかかっています)、表板側に(逆に)倒れているエンドピンが思いのほか多いので、一度ブッシングまでして角度修正できた楽器は、ビシッとしていて、何か襟を正した感じすらします。



◆コントラバス横板陥没修理

2015年06月18日(木)

 

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「オラオラ、休んでないで、もう一本ダッシュ!!」

 

ってういか、連続でもう一本、合板横板陥没割れ修理ですね(コントラバスで最もぶつけやすい箇所の一つですので、移動の際にはご注意下さい)。

 

今回の楽器は開いてしまった穴も大きく、前回紹介しました修理より、ちょっと難易度上がっております。心してかかるべきであります。

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例によって、そう。だんだん見慣れてきてしまったでしょうか。略して「鼻から」とかポップに呼ばれる日が来るのでしょうか・・・(勿論、そんな日は来なくていいです)。

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通したワイヤーにはこのようなフックになるものを取り付けて、陥没部の引き出しに臨みます。

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今回は損傷面積も大きいので、二度に分けて内側に陥没してしまった合板ラミネート材を引き出していきます。まず左半分。

 

全体を一気に引き上げて接着をしてしまうケースと勝手が違うなと感じたのは、片側半分にまだ穴が開いていますので、引き上げる力自体も持ち上げたい部分全体にうまく掛かっていかないということです。

 

その対処として一箇所力の支点のように機能するところを治具の裏面に作ってあげようと、ゴムのラバーをはさんで締めてみたのですが、うまく全体が引き上がってくれました(やり直しのききにくい修理は特に、接着前の圧着テストが大事だと思っています)。

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そして、残り半分の引き上げ作業。

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今回の楽器の横板は、大まかに三層構造の合板材だったのですが、二層目にすでに大きく失われてしまった箇所がありましたので、そこでも一度パズル的な補修をやっております。写真は第三層目の化粧板を合わせているところです。

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ここまでくると少しほっとします。今日から2本のコントラバスのリタッチを同時進行してまいります。



◆コントラバスの横板陥没修理

2015年06月15日(月)

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合板横板のコントラバス、陥没割れ修理です。そしてオープン無し、つまり外からできる修理をすることになりました。

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例によって、耳から入れて鼻から出す芸当、映画マトリックス公開以降ハリウッドでも多用されるようになったワイヤーアクション・・・とは違いますね。はい。

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いや、実際のところは、結構な緊張感を持って作業しております(だから、気晴らし程度のさむい冗談には目をつぶって下さいませ)。 ワイヤーを巻き上げつつ接着中それを保持してくれる道具です。勝手に通称「アルト・ベンリ」・・・。

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そしてニスの色あわせ(リタッチ)に入っていきます。



◆弓折れ修理

2015年06月13日(土)

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翼の折れた天使・・・いやいや違う、今度はヘッドの折れたヴァイオリン弓でした。

 

比較的断面積のあるチーク(弓のヘッドを白鳥の頭に例えた時の頬にあたる部分ですね)の部分で折れた弓は、このように縦に補強としてフェルナンブコ材を差し込むように入れてやると、元々その弓が持ている操作性やバランスにほとんど影響なく、再び弓としての使用に耐える強度を回復する事ができます。

 

ここから、ヘッドの輪郭を形成し直して仕上げてまいります。



◆大きめな指板たち

2015年06月12日(金)

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ネック・リセット中のヴァイオリンのニスの色合わせをしつつ、コントラバスの指板交換、ネックの折れたチェロの修理と補強のため外していた指板を再接着などをしました。



◆スパイラル・ブッシング

2015年06月01日(月)

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古いスズキのヴァイオリン。オールドテーパーのペグ穴を修正するために、スパイラル・ブッシングを施しました。

 

ペグの位置や太さなどに大幅な修正が必要な時には、一度ペグ穴全体を埋めて一から穴を開け直すブッシングが一般的ですが、比較的修正の内容がわずかで良い場合などには、スパイラル・ブッシングと呼ばれる処置をする事があります。

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文字通り、薄くスライスした木材(今回はナシ材を使用)をスパイラル状に巻き圧着してテーパーのついた筒状のブッシング材を作成し、それを元あるペグ穴に取り付けるというタイプのブッシング修理です。

 

ペグ穴の部分から割れが発生した楽器などにも補強として入れられる事もあります。